先日、東京のお客様より「がめ煮と筑前煮は、何がちがうのでしょうか」というお問い合わせをいただきました。
がめ煮は、福岡を代表する郷土料理のひとつで、鶏肉と大根、里芋、にんじん、ごぼう、レンコンなどの根菜類、干ししいたけやこんにゃくを入れて一気に炊き込み、素材本来の味、素材から出る天然のだしや旨みを生かした煮物です。お正月やお祝いごとのごちそうとして、福岡県各地ではよく食べられています。
名前の由来は諸説あり、博多の方言である「がめりこむ(寄せ集める)」が短くなり「がめ煮」と呼ばれるようになったという説や、文禄の役で出兵した兵士たちが「どぶがめ(スッポン)」とその他の材料をごった煮にして作った「亀煮」から名付けられたという説などがあります。
がめ煮は福岡県の郷土料理として、水炊きとともに農林水産省選定の「農山漁村の郷土料理百選」に選ばれているんですよ!
このがめ煮を、学校給食で郷土料理の一環として普及させようと「筑前煮」と呼ぶようになったそうです。ちなみに”筑前”とは旧国名で現在では福岡県北部・西部にあたります。
さて、お客様からの質問に答えるべく、がめ煮と筑前煮をググってみたら、がめ煮は材料を油で炒めない、筑前煮は油で炒める、という違いがある、と書いてあるサイトがいくつかありました。
う?ん..。どっちが本当だろう。
ちなみに、うちのおふくろは、油で炒めてなかった気がするけど、嫁さんは油で炒めてる気がする。
そこで、福岡の郷土料理にくわしい日本経済大学の竹川先生に聞いてみました。
「がめ煮は、もともと親鳥(卵を産み終わった鶏)を、鶏がらや皮、脂、内蔵、鶏足、とさかに至るまで、捨てることなく丸ごと骨の髄まで無駄なく調理して使っていました。わざわざ油をひかなくても、親鳥から出る脂で十分だったんです。それに、油自体がとても貴重なものだったので、庶民にはなかなか買えなかったのかもしれません。
がめ煮も筑前煮も、鶏の脂か市販の油を使っているわけで、材料も作り方もほとんど同じなので、同じものと言っていいのではないかと思います。」
がめ煮は、昔、親戚一同が集まったときや大勢が集まる寄り合い、大切なお客様のおもてなしなど特別な時で貴重な親鳥をつぶしてしか味わえなかったごちそう。福岡の先人の知恵がつまった、幸せ料理なんですね。
みなさんも是非、福岡の郷土料理がめ煮を作ってみてください!
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